日本ナレッジワーク、営業AI開発で35億円の資金調達成功
営業現場に特化したAIの開発を進めるナレッジワーク(Knowledge Work)が、シリーズCの第1回クロージングで35億円を調達した。8月4日に第三者割当増資による資金受け入れを公表し、社内知識管理SaaSを中核としてきた事業を、営業記録・教育・提案資料・ノウハウを横断して結び付ける「営業AI」プラットフォームへ本格的に転換する。発表は日本国内で行われた。 出資には既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)、DNX Ventures、WiL、Salesforce Venturesに加え、リコージャパン、キヤノンマーケティングジャパン MIRAI Fund、NTTドコモ・ベンチャーズ、三井住友銀行、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、三井住友信託銀行、電通ベンチャーズSGPファンド、博報堂DYベンチャーズなど大手企業のCVCや金融機関が名を連ねた。販売網や法人顧客接点を持つ事業会社が多数参加したことで、出資と連動した導入支援や共同提案の余地が広がる構図である。 同社は今回の発表と合わせて「営業AIエージェントOS」を公開した。従来のコンサルティングとAI製品群を一つの基盤で連携し、営業担当が情報検索、商談記録、育成コンテンツの受講までを同じ環境で完結できるよう設計した。一般的なSFAやCRMが活動管理や顧客データの蓄積に軸足を置くのに対し、社内資料や製品情報、過去の商談ログをAIが読み込み、次に取るべきアクションの提案まで踏み込む点を特徴とする。 提供サービスの一つである商談の自動記録・分析では、会話内容をAIが要約し、以降の提案・フォローに活用できる形で整理する。NECは約1,000人規模で導入しており、北陸銀行も活用を進めている。AIアバターを相手に営業トークを練習する「AIロールプレイ」も展開し、みずほ信託銀行などで採用例がある。 背景には、日本企業で長年指摘されてきた「営業ノウハウの属人化」がある。熟練者の退職で暗黙知が失われやすく、在宅勤務の拡大も含めOJT中心の教育が難しくなった。ナレッジワークは社内に蓄積された成功・失敗の知見をAIに学習させ、会議録作成の省力化や新人育成の短縮、トップセールスの手法の全社展開を通じて、担当者一人当たりの生産性を高めることを狙う。同社は自らの事業を「SaaS企業からAI企業へ」の転換期にあると位置づけている。 資金調達の規模も目を引く。企業データベースのCompalyzeが確認したところでは、2026年8月第1週に日本の未上場企業が公表した資金調達の中で、ナレッジワークの35億円が単一案件として最大だった。シリーズCはまだ第1回クロージングの段階で、ラウンドは継続中である。 企業価値については、スタートアップデータベース「INITIAL」が今回の調達後に潜在株式を含め約205億9,400万円と推計している。資金は製品開発と大企業向けの展開強化に充て、営業AI市場での先行確立を目指す構えだ。 生成AIの普及で、日本のB2Bソフトウェアは「データをためる」段階から、AIが業務を代行・補助する「エージェント」への移行が進む。営業領域は効果測定が比較的しやすく、導入企業は時間削減や教育効率化を直接の成果に落とし込みやすい。リコーやキヤノン、通信・金融・広告の大手系列が投資家として名を連ねた今回の資金調達は、営業AIをめぐる実装競争が日本の企業現場で本格化していることを示す出来事である。今後は、投資家の顧客基盤と技術をどう結び付け、導入効果をどこまで数値で証明できるかが問われる。
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