
米国で広がる「ビッグステイ(Big Stay)」の動きが、日本の雇用市場でも注目を集めている。より良い条件を求めて転職するのではなく、現在の勤務先にとどまりながらキャリア形成を図る働き方が新たな潮流として浮上している。
ビッグステイは、新型コロナ禍後に話題となった「グレート・レジグネーション(大量退職時代)」とは対照的な現象とされる。景気の先行き不透明感や雇用環境の変化を背景に、安定性を重視する労働者が増えているためだ。
米国では企業が人材流出を防ぐため、既存社員への昇給やキャリア支援を強化している。その結果、一部では転職者よりも同じ企業に残った社員の賃金上昇率が高くなるケースも見られる。
日本でも人手不足の深刻化を背景に、人材の確保から定着へと企業戦略が変化しつつある。賃上げや福利厚生の充実、柔軟な働き方の導入などを通じて従業員の離職防止を図る企業が増えている。
特にデジタル人材やAI関連人材の確保が重要課題となるなか、企業にとっては新規採用以上に既存人材の維持が経営課題となりつつある。
専門家の間では、日本でも独自の形で「日本版ビッグステイ」が進む可能性があるとの見方が出ている。ただし、米国と比べて長期雇用文化が根強く残る日本では、その現れ方は異なる可能性も指摘されている。
今後は転職市場の動向だけでなく、企業がどのように人材を育成し、定着させるかが競争力を左右する重要な要素となりそうだ。