日本とソロモン諸島の首脳が23日、東京の首相官邸で会談し、経済協力と地域安保の強化、太平洋島しょ国の結束を柱に連携拡大で一致した。日本は最大30億円の円借款に加え、人材育成や経済社会インフラを支える無償資金協力を提示。中国の影響力拡大が続く南太平洋で、価値を基軸とする協力を打ち出し、2027年夏に横浜で予定される第11回太平洋・島サミット(PALM11)に向けた協力も確認した。
首相官邸によると、高市早苗首相は同日午後、5月に就任したマシュー・クーパー・ウェイル首相と約25分間会談した。高市首相は就任を祝意し、今回の訪日は日本を含む伝統的パートナーとの関係を重視する姿勢の表れだと評価。両首脳は、自由で開かれたインド太平洋の下、経済開発と国家の回復力強化で協力を進め、ソロモン諸島の自律性や災害・経済危機への対応能力を高める事業を支援する方針を確認した。
ソロモン諸島は南太平洋に点在する約900の島から成り、国土は約2万8900平方キロメートル、人口は約81万9000人。第2次世界大戦の激戦地として日本とも歴史的関係を持ち、独立した1978年以降、日本は医療や教育、漁業、廃棄物処理、行政人材育成などで協力を積み上げてきた。島しょ国が抱える気候変動や海面上昇、インフラ脆弱性といった課題への長年の関与が基盤となっている。
資金協力の具体化も進む。日本政府は会談に先立つ今月8日、首都ホニアラで最大30億円の円借款に関する書簡を交換。6月には人材育成のための奨学事業に1億2600万円、経済社会開発事業に1億6800万円の無償資金協力を決定した。開発協力を通じ、低利の資金や技術支援を組み合わせる日本のモデルを提示しつつ、相手国の優先課題を尊重する姿勢を示した形だ。
両首脳が「太平洋島しょ国の結束と一体性」を強調した点も今回の特徴だ。2022年にソロモン諸島が中国と安保協定を結んだことは、米豪ニュージーランドや日本の関心を集めたが、協定の詳細は非公開のまま懸念が指摘されている。ウェイル首相は域内国家が主導する安保協力の重要性を各国で訴えており、今回の会談でも、法の支配や自由、民主主義、人権といった基本的価値に立脚した関係を確認した。日本側は会談で中国を名指ししなかったが、価値と自律性、地域の結束を繰り返し掲げた外交メッセージは明確だ。
日本への影響という観点では、今回の合意は太平洋の海洋秩序維持とサプライチェーンの安定に直結する島しょ国との関与を着実に深めるものだ。奨学金や行政人材の育成は、中長期の人のつながりを広げ、保健・教育、災害対応、漁業、廃棄物処理といった分野で日本の技術協力が生かされる機会を拡大する。島しょ国は国際機関で独立した票を持ち、気候変動や海洋ルール作りでも発言力を有するため、連携の積み重ねは日本外交の厚みを増す。
今後は、PALM11の成功に向けた調整が実務レベルで進む。日本政府は経済開発と回復力支援を継続する立場を示し、太平洋島しょ国が主体となる枠組みづくりを後押しする。ソロモン諸島は中国との関係を直ちに縮小する方針を示しておらず、従来パートナーとの関係を再構築しつつ対外関係のバランスを図る姿勢をとっている。日本は、価値と支援の実績を軸に関係強化を積み上げることで、地域の安定と繁栄に寄与していくことになる。