サムスンメディソン、AI搭載超音波機器「HERA Z10」発表で女性健康診断を拡大
英国ロンドンで9月4〜7日に開催された世界産婦人科超音波学会(ISUOG)国際学術大会で、韓国の医療機器メーカー、サムスンメディソンがAI搭載の産婦人科向けプレミアム超音波診断装置「HERA Z10」を披露した。既存のフラッグシップ「HERA Z20」に新機種を加えたことで、同社のプレミアムライン「HERA Zシリーズ」は選択肢が広がり、女性の健康診断領域での提案を強化する。 サムスンメディソンはサムスン電子のグループ企業で、超音波診断技術を中核とする。ISUOGは産婦人科超音波分野の主要な国際学会で、各国の医療機関・企業が最新の研究成果や新技術を共有する場となっている。今回、同社はHERA Z10を含む「HERA Zシリーズ」を出展し、胎児と妊婦の評価を一体で支援する統合型プラットフォームとしての位置付けを打ち出した。 新製品HERA Z10は、上位機「HERA Z20」に搭載されたAIベースの臨床ワークフローを継承しつつ、高精細画像のためのビームフォーミング技術を採用した点が特徴だ。医療機関の診療体制や運用目的に応じてシステムを選べるようラインアップを構成し、単一の最上位機に依存せず、プレミアム超音波の適用現場を広げる考えが示された。 同シリーズには、妊婦・胎児の評価で用いる自動計測などのAI機能が組み込まれており、新生児診断に対応する専用プローブも用意する。産前検査から女性の各種疾患評価、新生児期の診断までを一つのプラットフォームで連続的につなぐ発想だ。特にHERA Z10は、反復作業の多い超音波検査で術者の操作負担を軽減し、検査効率を高める点に焦点を当てている。 同社が公表した共同研究結果では、「Live ViewAssist™」を活用することで妊娠中期の精密超音波検査時間が最大52%短縮された。研究には、ISUOG創設メンバーでもあるイタリア・ローマのサピエンツァ大学のGiuseppe Rizzo氏とDaniele Di Mascio氏が参加した。 主要計測項目を支援する「EzStructure™」は、手動操作を最大71%削減する結果が示された。反復的な計測工程の負担を抑えるとともに、結果の一貫性や客観性の向上を狙った機能である。 さらに「MV-Flow 3D」は微小血流を高解像度で可視化する技術で、胎盤癒着を含む異常な子宮内血管や臍帯血管の観察に活用できる。妊婦と胎児の状態把握が求められるハイリスク妊娠の現場で有用性が見込まれる。「FibroidVue」は子宮、子宮内膜、子宮筋腫の領域をAIが自動で区分・可視化し、各領域のサイズを計測することで、婦人科疾患の評価を支援する。 会期中、サムスンメディソンは製品の機能紹介にとどまらず、超音波技術の体験型プログラムも展開した。「ART OF ULTRASOUND」をテーマに胎児超音波画像をAIで再解釈したビジュアル展示を行い、またタブレット端末「Galaxy Tab」と連動し胎児の成長記録を確認するソリューションもデモンストレーションした。検査時点のデータを、妊娠期間を通じた健康管理体験へと接続する取り組みといえる。 同社はHERA Z10の投入を機に、プレミアム超音波分野でAIを活用した診断支援と検査自動化の適用範囲を広げていく方針を示した。HERA Zシリーズの画像技術とAIワークフローを基盤に、医療機関ごとの環境に即したソリューション提供を進める構えだ。 超音波診断装置の競争軸は、画像品質の優劣に加え、AIによる自動化やワークフロー効率化へと拡大している。高齢妊娠や合併症対応などで精緻な評価と迅速な意思決定が求められる中、検査の標準化と作業負荷の低減は、国や地域を問わず医療現場の関心事となる。今回のロンドンでの発表は、グローバル医療機器市場での技術潮流を示す一例であり、日本の医療機器産業にとっても、製品開発や運用価値の設計における参考材料となり得る。
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