欧州航空大手エアバスが、次世代の短・中距離商用機に向けたハイブリッド電力アーキテクチャの統合実証を本格化する。発電・配電、バッテリー連携、エネルギー管理を一体の高電圧システムとして検証する国際共同プロジェクト「LEIA」を22日に公表し、2027年の地上実証を計画する。部品ごとの改良にとどまらず、機体全体での電力生態系を検証する点が要となる。
背景には、航空業界全体で炭素排出削減圧力が強まる中、「モア・エレクトリック・エアクラフト」と呼ばれる電動化の潮流がある。従来の油圧・機械式装置を電動化することで、機体重量や整備負担の低減、エネルギー効率の向上が期待される。他方で、航空は自動車よりも高出力と軽量化の両立が厳しく、冗長性設計に加え、バッテリーのエネルギー密度、熱管理、火災安全性といった難題の解決が欠かせない。エアバスは、将来の認証や実装を見据え、統合性と安全性を同時に検証するとしている。
経緯として、LEIAはハイブリッド電動推進の要素技術を磨いた「SWITCH」プロジェクトの成果を土台にする。コリンズ・エアロスペースは7月に統合ラボ試験を完了し、プラット・アンド・ホイットニー、GKNエアロスペース、MTUエアロエンジンズなどが参画した。SWITCHで検証済みのサブシステムは、ドイツ・オットーブルンのエアバス研究拠点へ移送され、機体設計やバッテリーインターフェース、エネルギー管理を含む機体レベルの統合試験に入る。実機に近い条件下で、電圧変動やシステム干渉、過負荷、非常時の電力切替能力まで確認する段取りだ。
LEIAには、AVL、コリンズ・エアロスペース、欧州航空宇宙科学ネットワーク、フラウンホーファー、リーブヘア・エアロスペース、リンクセオ、オランダ航空宇宙センター、サフラン、SAFT、英ウォリック大学、ブロツワフ工科大学など、欧州・英国・米国の産学が参加する。欧州連合の「クリーン・アビエーション・ジョイント・アンダーテイキング」の支援を受け、部品段階の技術を機体レベルへ引き上げ、国境を越える供給網と認証要件の調整を進める。エアバスは拡張型モーター・発電機、次世代電子制御、配電機器を統合し、総合試験を経て2027年に地上実証を行う計画だ。
日本への影響という観点では、電動航空は高性能バッテリーや電力半導体、熱管理、電動アクチュエータなどの基盤技術に直結しており、日本の素材・装置産業や電子部品産業に関わりが深い。サプライチェーンの要件が「個別最適」から「システム統合」へ移る中で、国際共同実証で用いられる規格・検証手法の把握が、日本企業の設計・試験対応や取引先選定に影響し得る。同時に、韓国ではサムスン電子が2024年3月に新型半導体製造装置の開発成功を発表しており、従来比で製造効率を大幅に高め次世代半導体の量産に寄与するとしている。日本政府が先端素材・装置の輸出管理を強化する中、韓国の技術進展はサプライチェーン再編の一要素となり、日韓が競合と連携を併せ持つ半導体分野の動きは、将来の航空電動化に不可欠な電力電子分野にも波及する構図だ。なお、サムスン電子は韓国の代表的な財閥グループに属する総合半導体大手で、韓国の財閥は政府の産業政策と連動して成長してきた大企業集団である。
今後の見通しとして、エアバスは地域路線、短・中距離機から段階的に電動化を広げる一方、長距離大形機は必要エネルギーが大きく完全電動化が難しいとの前提を置く。LEIAは推進系単独ではなく機体全体の電力生態系を検証するため、これが安定すればハイブリッド推進や将来の完全電動推進の実装に向けた足場が整う。2027年の地上実証結果は、次世代の短・中距離機における電力構造やハイブリッド機の商用化スケジュールを見極める基準になるとされる。日本の航空・電機各社にとっては、国際共同プロジェクトの動向を踏まえ、部材開発から評価手法、人材・設備の配備まで、中期的な準備を加速できるかが問われる局面に入った。