韓国のエンターテインメント企業Dayonedreamが、同社のRWA(実物資産のトークン化)プラットフォーム「Wavist」で、動画コンテンツIPを裏付け資産とする新カテゴリ「$CNTNT」の初案件を始動した。短尺ドラマのIPを基礎資産に、資金調達から返済までの一連の資金フローをグローバルL1の「CONX」メインネット上で処理する。従来の不動産や債券中心だったRWA市場に、Kコンテンツの映像IPを本格的に取り込む取り組みで、同社は今後、アーティストのマネジメントやアルバム企画を対象にした「$ARTIST」カテゴリにも拡大する方針だ。
RWAは、現実世界の資産(不動産、債券、知的財産など)をブロックチェーン上のデジタルトークンとして発行・流通させる仕組みで、権利関係やキャッシュフローをオンチェーンで管理できる点が特徴だ。Wavistはコンテンツ分野に特化したRWA基盤で、これまでにK-POP公演IPを裏付けにした「$CNCRT」を発行。米国証券法に基づき海外の機関投資家向けに行われたSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)では、発行から満期償還までのライフサイクルをオンチェーンで完了し、償還後は発行トークンをバーン(消却)して流通から永久に除外した。今回の$CNTNTは、映像IPにおける制作ファイナンスと収益精算のサイクルを検証する次段階と位置づける。
第1弾の$CNTNTは短尺ドラマIPが基礎となる。具体的なタイトルや商品設計の詳細は、正式公開に合わせ段階的に開示される予定という。短尺コンテンツは、開発から配信、収益精算までの期間が比較的短く、オンチェーンでの資金流・返済プロセスの検証に適している。プロジェクトはCONXと連携して実装され、資金は同エコシステムファンドからガバナンス手続きを経て割り当てられた。資金供給と返済はともにCONXメインネット上で実行される。CONXはCom2uS Holdings、Google Cloud、LayerZero、Animoca BrandsなどグローバルのWeb3企業が後援し、コンテンツ産業とデジタル金融を接続するブロックチェーン基盤の拡充を進めている。
Dayonedream(CEOはLee Min-hyung氏)のWavistは、IP開発から商品組成までを一体で扱うことを掲げる。公演IPの$CNCRTで証券発行と償還の一連の実務をオンチェーンで示したのに続き、映像IPでの制作資金調達と収益配分の実運用を$CNTNTで可視化する構図だ。さらに、アーティストのマネジメントやアルバム企画を対象とする$ARTISTの投入を計画し、韓国発の多様なコンテンツIPをグローバル投資市場と結び付けるとする。CTOのLee Min-jun氏は、$CNCRTでの実証を踏まえ$CNTNTの開始がラインナップ本格展開の節目になると説明し、$ARTISTへの拡大方針も示している。
日本への影響という観点では、コンテンツIPを裏付け資産とするRWAの具体事例が国際的に運用されることで、国内のエンタメ・メディア企業や金融機関が、制作ファイナンスや収益精算のデジタル化に関する実務モデルを検討する際の参照点となり得る。日本でも金融商品取引法の枠組みの下でSTOが整備され、不動産や社債のトークン化が進むなか、コンテンツ分野の事例が積み上がることは制度設計や事業開発の比較材料となる。ただし、$CNCRTは米国法準拠で海外機関投資家向けに実施された経緯があり、$CNTNTの投資家区分や日本国内での取り扱いについては現時点で公表されていない。
技術・運用面では、資金の拠出から返済、収益分配までをメインネット上で処理し記録する仕組みによって、プロジェクト・ファイナンスの資金流や権利処理のトレーサビリティ(追跡可能性)と監査性を高めやすい。国境をまたぐ配信やライセンス契約が絡むコンテンツ産業において、どの段階でどの主体に資金やロイヤルティが動いたかをオンチェーンで確認できる点は、関係者間の情報非対称の縮減に資する。
今後の見通しとして、Dayonedreamは短尺コンテンツで精算構造を検証したのち、ドラマシリーズや映画など長尺IPにも対象資産を広げ、案件規模を段階的に拡大していく計画を示す。$ARTISTの投入も控えており、Kコンテンツの多様なIPを順次グローバル投資市場につなぐ構えだ。商品設計の詳細、開示スケジュール、投資家区分などは段階的に明らかにされる見通しで、日本の事業者・投資家にとっては、制度・会計・税務面の整合を確認しつつ動向を注視する局面が続く。