ドイツ・ベルリン—韓国のLG電子は国際家電見本市「IFA 2026」で、家電と住空間、外部サービスをAIで結び付ける「AIホーム」拡充戦略を公表した。中核は次世代AIホームハブ「ThinQ ON」とAIホームプラットフォーム「ThinQ」で、個別家電へのAI搭載を超え、生活動線に沿って機器とサービスを横断的に最適化するエコシステムの姿を提示した。
IFAは世界有数の家電・ICTの見本市で、最新トレンドの発信地として知られる。LGは9月4日から5日間、ベルリンで開かれる本催しに出展し、テーマを「Innovation in tune with you」として約3,745㎡のブースを構えた。AI家電、AIホームハブ、AIホームプラットフォームをはじめ、約150種の主要製品を展示し、AIが暮らしの各シーンにどう組み込まれるかを実演した。
会場ではリビング、キッチン、寝室、バスルーム、屋外空間を生活環境さながらに再現。リビングではThinQ ONが帰宅時刻や生活パターンを学習して室温や空気質を自動調整し、キッチンでは保有食材や家族の予定、食習慣に応じて献立と調理手順を提案。寝室では翌日の予定と睡眠環境に合わせて空調や照明を制御し、バスルームではシャワー後の換気や除湿を自律的に行うなど、空間横断の制御を見せた。
同社はまた、自律型AIエージェント機能を強化した「ThinQ Claw」を初公開。ThinQ ONに搭載され、ユーザーとの対話を通じて状況を把握し、必要な機能を提案・実行する。外出先からのチャット操作に対応し、ウェブ検索やカレンダーなど外部サービスとも連携。音声命令の待機にとどまらず、状況理解に基づいて先回りして動く家庭内AIの方向性を示した。
AIによる空間管理は家庭内にとどまらない。B2B向け統合管理ソリューション「ThinQ Pro」では、家電と空調(HVAC)、エネルギー設備を単一システムで一元管理する提案を行い、ビルやオフィスなど商用施設での活用も見据える。
エコシステム拡張では、2024年に取得したスマートホーム基盤のAthomの「Homey」も活かす。Homeyは家電、照明、センサーなど5万点超のIoT機器をつなぐオープン型プラットフォームで、LGはこれをAI家電、HVAC、太陽光発電、エネルギー貯蔵装置(ESS)と連携させ、家庭全体の電力フローを俯瞰するHEMSへと広げた。今後は欧州の集合住宅デベロッパー向けB2Bにも展開する計画だ。
欧州市場の住環境やエネルギー消費特性を踏まえた新カテゴリーとして、「Fit & Max」シリーズを冷蔵庫から洗濯機、乾燥機、食器洗い機へと拡大して初披露。周辺家具に溶け込むビルトイン志向の空間適合性と、容量・性能の両立を狙う。冷蔵庫は壁面収納に密着した状態でも最大110度まで開閉できる構造や、狭小空間でも引き出しを取り出せる「ゼロクリアランスヒンジ」を採用した。
ランドリー製品は欧州標準の家具奥行600mmを守りつつ、洗濯・乾燥容量を確保。縦型一体の「WashTower」や、洗濯と乾燥を1台で完結させる「WashCombo」も展示した。省エネ面でも、欧州の最上位効率等級Aの基準からさらに消費電力を抑えた洗濯機(A比70%削減)、A-30%の食器洗い機、A-35%の冷蔵庫などを投入。AIが食器量や汚れを分析する「AI SenseClean」、繊維を判別してコースを推奨する「AI Wash」「AI Dry」、使用パターンに応じて冷却運転を調整する「AI Fresh」、電力消費を最適化する「AI Saving Mode」など、運用時の効率化を支えるソフト機能も示した。
プレミアム映像・生活家電の展示では、83型の無線ウォールペーパーTV「LG SIGNATURE OLED W」、2026年型の「LG OLED evo AI」、さらに「Micro RGB evo」などを披露。LG SIGNATUREのコーナーでは、音声認識で冷蔵モードを提案する冷蔵庫や、庫内カメラで食材を認識して調理法を提示する30インチ壁付けオーブンの「Gourmet AI」をデモした。エントランスにはホームロボット「LG CLOiD」が登場する「LG AIオーケストラ」を設置し、キネティックLEDと家電・TV・空調を連動させ、単一のAIエコシステムで動く未来像を「Zero Labor Home」のビジョンとして表現した。
事業面では、ブース面積の約46%をビジネスパートナー向けの商談空間とし、欧州の流通事業者を含むB2B顧客の開拓を狙う最大規模のプライベートブースを用意。LGは、AI家電・ハブ・プラットフォームを結ぶエコシステムを広げ、グローバルのプレミアム家電市場で競争力を高める方針を示した。
家電業界のAI競争は、単品機能の高度化から、家庭内の複数機器やエネルギー、外部サービスを統合するプラットフォーム競争へと軸足を移しつつある。省エネを重視する欧州市場に向け、AIホームと高効率家電を二本柱に据えた今回の提示は、その流れを象徴する。スマートホームやスマートシティの取り組みが進む日本にとっても、オープンプラットフォームの活用やB2Bとの接続、空間全体の最適化を見据えた製品・サービス設計の参考点となり得る。