日本のエンゲル係数、44年ぶり高水準 「食費高騰」だけでは見えない家計の変化

chatgpt image 2026년 9월 3일 오후 01 41 43

▲日本の二人以上世帯のエンゲル係数は、2020年の27.5%から2025年には28.6%へ上昇し、1981年以来44年ぶりの高水準となった。2026年1~6月平均も28.5%と高い水準が続いている。出典=総務省「家計調査」、内閣府「今週の指標 No.1425 エンゲル係数上昇の背景」/グラフィック=J-POLICON

2025年は28.6%、2026年上期も28.5% 節約を強めても食料支出が増える構造を読み解く

日本の家計で、消費支出に占める食料費の割合を示すエンゲル係数が高止まりしている。内閣府が9月2日に公表した分析によると、二人以上世帯のエンゲル係数は2020年の27.5%から上昇し、2025年には28.6%と1981年以来44年ぶりの高水準となった。2026年も1~6月平均で28.5%となっており、食料への支出が家計全体の中で大きな比重を占める状態が続いている。

エンゲル係数の上昇は、一般に家計の余裕が失われている象徴として語られやすい。しかし今回の内閣府分析を詳しくみると、現在の日本で起きている変化は「生活が苦しくなったから食費の割合が上がった」という一つの説明だけでは捉えきれない。食品価格の上昇、外食需要の回復、消費者の節約行動が同時に進み、その結果として食料支出が消費全体を上回るペースで増えているからだ。


エンゲル係数はなぜ上昇したのか


エンゲル係数は、消費支出に占める食料費の割合を示す指標であり、食料支出が消費全体より速く増えれば上昇し、逆に他の支出がより速く増えれば低下する。総務省の家計調査でもこの考え方に基づいて算出されており、家計の消費構造を把握する代表的な指標として長く利用されてきた。

内閣府の分析では、2023年以降、食料支出が消費全体の増加に最も大きく寄与している。消費支出そのものも増えているが、それを上回るペースで食料への支出が伸びたため、結果としてエンゲル係数が押し上げられた。さらに消費者物価指数を費目別にみても、食料は2022年以降、毎年1%ポイント以上の寄与を続けており、家計負担を押し上げる中心的な項目になっている。

つまり現在のエンゲル係数上昇は、家計が食料を大量に買うようになったから起きているわけではない。むしろ、消費者が購入量を抑えたり、安価な商品へ切り替えたりしているにもかかわらず、価格上昇の影響がそれを上回っている点に特徴がある。


「買う量を減らしても食費が増える」状況


食料支出の中身をみると、物価上昇の影響は幅広い。家計調査では食料を穀類、魚介類、肉類、乳卵類、野菜・海藻、果物、油脂・調味料、菓子類、調理食品、飲料、酒類、外食の12項目に分けているが、2023年以降は酒類を除く多くの項目で支出増加が続いている。

内閣府が名目支出と物価変動を分けて分析したところ、多くの食品分野では価格上昇率が支出額の伸びを上回っていた。この動きは、消費者が価格上昇に対して購入量を抑えたり、商品を切り替えたりすることで支出を抑えようとしていることを示している。

それでも食料支出全体は増えている。節約による数量減少よりも価格上昇の影響が大きいためであり、家計にとっては「以前と同じ量を買って支出が増えた」というより、「買い方を変えても支出を十分には抑えられない」という状況に近い。


家計はすでに行動を変えている


消費者が物価高をそのまま受け入れているわけではない。内閣府が引用した「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」では、食品価格上昇への対応として最も多かったのが「価格の安いものに切り替えた」で59.5%に達した。続いて「外食の機会を減らした」が42.2%、「購入量を減らした」が39.0%、「嗜好品を減らした」が29.7%となり、「特に対応しなかった」の15.3%を大きく上回った。

この結果から読み取れるのは、家計がすでに食料消費の中でかなり具体的な防衛行動を取っているということだ。より安い商品を選び、量を減らし、嗜好品や外食を選別することで支出を抑えようとしているが、それでも食品価格全体の上昇が続けば、支出額そのものは減りにくい。

食品価格の値上げについても、調査では75.5%が一定範囲で許容可能と回答した。その中で最も多かったのは「1割高までであれば許容できる」の37.5%であり、消費者が値上げを歓迎しているわけではないものの、一定程度の価格上昇を避けられないものとして受け止めている姿も浮かぶ。


外食は単純な「節約対象」ではない


興味深いのは外食の動きである。家計調査では2023年以降、食料支出の中で外食が最も大きな項目となっており、調理食品と合わせると食料全体の4分の1以上を占める状態が続いている。外食は価格上昇だけでなく、利用数量の増加も支出を押し上げている点で、他の食品項目とは性格が異なる。

日本フードサービス協会のデータを基にした内閣府分析では、2022年以降、外食産業の売上高は増加傾向が続き、客数と客単価の双方が上昇している。消費者は日常的な食費では価格の安い商品を選ぶ一方、年末年始や夏休み、家族行事などでは外食に支出するという「メリハリ消費」を強めているとみられる。

そのため、エンゲル係数の上昇をすべて「節約による生活防衛」と捉えるのも正確ではない。食品の値上がりによる不可避な負担増に加えて、外食など一部の分野では消費者が選択的に支出を維持している構造が重なっている。


物価全体より食料価格が高くなれば係数は上がる


今後のエンゲル係数を考える際には、食料価格が物価全体に対してどの程度上昇するかが重要になる。総務省が8月21日に発表した2026年7月の全国消費者物価指数は、総合指数が前年同月比1.9%上昇、生鮮食品を除く総合が1.8%上昇、生鮮食品とエネルギーを除く総合が1.9%上昇となった。

エンゲル係数は食料支出と消費支出全体の相対関係で決まるため、食品価格だけが全体の物価より速く上昇すれば、家計が購入量を減らしても係数は上昇しやすい。逆に、食料以外のサービスや耐久消費財への支出が大きく増えれば、食費が増えていてもエンゲル係数が下がる可能性がある。

この点は、エンゲル係数だけを見て生活水準を判断することの限界でもある。係数の数字だけでなく、食料支出額そのものがどの程度増えたのか、購入量がどう変わったのか、外食など選択的な消費がどう動いているのかまで確認しなければ、家計の実態を正確には捉えられない。


2026年も食品値上げは続く


内閣府の分析は、食品価格の上昇が一時的な現象ではなく、一定程度常態化する可能性にも触れている。帝国データバンクの調査を引用し、2026年の飲食料品値上げ品目数は、1~11月までに判明している分だけで1万8,347品目に達しており、年間では前年の2万609品目を上回る可能性があるとしている。

原材料費や物流費、人件費、為替など、食品価格を押し上げる要因が複数残っているなかでは、企業側も価格転嫁を避け続けることは難しい。日本経済がデフレから持続的な物価上昇を前提とする局面へ移るのであれば、食料品の値上げも「異例の出来事」ではなく、企業経営と家計の双方が織り込むべき通常の経済現象になっていく。

その場合、消費者側では単純な節約だけでなく、同じ支出額で何を買うかという選択がさらに重要になる。低価格商品やプライベートブランドへの移行、外食回数の調整、調理食品の活用など、食生活そのものが価格環境に合わせて変化する可能性が高い。


高齢化や世帯構成も無視できない


エンゲル係数を長期比較する際には、人口や世帯構成の変化にも注意が必要だ。内閣府も、世帯単位の消費支出は世帯人数や年齢構成によって内容が変わるため、単純な時系列比較には留意が必要だとしている。

高齢世帯では教育費や住宅関連支出が小さくなる一方、食料費が消費全体に占める比率が相対的に高くなることがある。単身世帯の増加や高齢化が進めば、社会全体のエンゲル係数にも人口構造の変化が影響する可能性がある。

したがって1981年以来44年ぶりという数字は重要だが、1981年の家計と2025年の家計をそのまま同じ条件で比較することはできない。現在の上昇を理解するには、食品価格だけでなく、世帯構成、外食、サービス消費などを含めた生活様式の変化まで視野に入れる必要がある。


「食費高騰」から見える消費の優先順位


それでも、今回のデータが家計の負担増を示していることは間違いない。2025年の二人以上世帯では、年間平均の消費支出に占める食料の割合が28.6%となり、食料費は1世帯当たり月平均8万9,754円だった。食料は10大費目の中で最も大きく、家計にとって最も削りにくい支出の一つである。

旅行や衣類、耐久消費財などは購入時期を遅らせることができるが、食事を完全に先送りすることはできない。価格上昇が続けば、家計はまず商品の選択や購入量を変え、それでも足りなければ食料以外の支出を抑えることになる。

この意味で、エンゲル係数の上昇は食料市場だけの問題ではない。家計が食品価格の上昇分を吸収するために他の消費を減らせば、小売、レジャー、耐久財、サービスなど幅広い産業の需要にも影響が及ぶ。


エンゲル係数だけで「暮らし」を判断しない


2025年に44年ぶりの高水準となったエンゲル係数は、日本の家計が直面する物価高を象徴する数字として今後も注目されるだろう。ただし、その数値をそのまま「日本人が貧しくなった」と読み替えるのは慎重であるべきだ。

現在起きているのは、食料価格の上昇が家計全体の支出増加を上回り、消費者が節約行動を強めても食費の比率が下がりにくくなっているという現象である。その一方で外食のように数量面でも支出が伸びている分野があり、世帯構成や消費行動の変化も係数を動かしている。

内閣府も、今後の家計負担を考える際にはエンゲル係数だけでなく、消費支出全体、食料支出額、さらに外食を含む各費目が価格と購入量のどちらによって変化しているのかを見る必要があるとしている。

エンゲル係数28.6%という数字が示しているのは、食費が高くなったという事実だけではない。物価が継続的に上昇する時代に入り、日本の家計が限られた所得の中で何を削り、何を残すのかという消費の優先順位そのものが変わり始めている。

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