韓国、薬局名に「倉庫」「マート」「工場」など禁止へ 名称規制を省令で具体化

韓国で、薬局の名前や表示に使える表現を細かく制限する制度整備が進んでいる。保健福祉部は2026年10月6日、薬局名に「倉庫」「マート」「工場」「最大」「特価」など、消費者の誤認や医薬品の過大消費を招くおそれがある表現を使えないようにするため、「薬事法施行規則」の改正を推進すると公表した。焦点は、単に派手な看板を抑えることではない。薬局を日用品の安売り売場のように見せる表現をどこまで制度上制限し、医薬品販売の公共性と消費者保護をどう両立させるかにある。

何が変わるのか――薬局名の規制を具体的に広げる動き

今回の措置でまず押さえておきたいのは、韓国政府が新たに「薬局の名称そのもの」を規制対象として明確化しようとしている点だ。保健福祉部の説明では、薬局の機能をゆがめたり、消費者を誘引したり、医薬品の乱用を促しかねない表現を、薬局の固有名称や表示・広告に使えないよう基準を具体化する。すでに韓国の薬事法には、薬局の名称などで消費者を誘引する行為や販売秩序を乱す行為を防ぐため、保健福祉部令で定める事項を守るべきだという大枠の規定がある。今回はその大枠を、実際にどのような語句が問題になるのかというレベルまで落とし込む作業といえる。

日本の読者には、薬局名の規制がやや細かく映るかもしれない。しかし韓国政府は、名称や看板が単なる営業上の演出ではなく、消費者に薬局の性格や医薬品の購入判断基準を伝える情報手段だと位置づけている。言い換えれば、価格訴求や大型量販店を連想させる表現が前面に出ると、薬局の本来機能である調剤、服薬指導、薬事サービスよりも「どこが一番安いか」という基準だけが強調されやすい、という問題意識が制度改正の出発点になっている。

なぜ名称まで問題になるのか――背景にある「倉庫型薬局」論争

制度見直しの背景には、韓国で広がった「倉庫型薬局」をめぐる議論がある。保健福祉部は2026年8月26日、国会本会議で薬事法改正案が可決された際、近年の倉庫型薬局をめぐる社会的副作用への対応が改正の意味だと説明した。ここでいう倉庫型薬局とは、倉庫型量販店のような大規模・低価格イメージを前面に出した販売形態や名称を指す文脈で使われている。政府が問題視しているのは、こうした表現が医薬品を一般工業製品や日用品と同じ感覚で大量購入すべき商品であるかのように印象づける点だ。

韓国政府の説明では、消費者が薬局を選ぶ際の基準が、自身の健康状態や薬剤師の専門サービスではなく価格だけに偏るおそれがあるとされる。医薬品は、食品や雑貨のように「まとめ買いで得をする」ことが必ずしも望ましい商品ではない。症状、用法用量、副作用、重複服用の有無などを踏まえた適正使用が前提であり、過度な値引きイメージや大量陳列イメージは、その性格と緊張関係にある。名称規制は価格政策そのものではなく、薬局と医薬品の性格を誤認させる表現を抑える消費者保護策として位置づけられている。

どんな言葉が使えなくなるのか――禁止対象の考え方と例

10月6日に公表された内容と政策ブリーフィングの整理では、規制対象は大きく三つに分けられる。第一は、薬局の機能をゆがめるおそれがある表現だ。「倉庫」「マート」「工場」などがこれに当たる。これらは大量保管、量販、製造拠点といったイメージを強く帯びるため、薬局の専門施設としての性格を薄めると政府はみている。

第二は、医薬品の過大消費を誘導するおそれがある表現で、「割引」「特価」「低廉」などが例示されている。これは、安いから多く買うという発想を前面に出しやすく、必要量を超えた購入や自己判断による過剰使用につながりかねないという考え方だ。第三は、客観的根拠がないまま優位性をうたう表現で、「最大」「最高」「最初」「一番大きい」といった語が挙げられている。消費者に店舗規模や価格、品ぞろえ、専門性で他店より優れているとの印象を与えても、その裏づけがなければ誤認表示に近い問題を生みうる。

もっとも、現時点で重要なのは、これらが「例示」である点だ。保健福祉部は方向性を示したが、最終的にどの語句が明文で列挙され、どの程度まで類似表現が含まれるのかは、改正される施行規則の条文や運用基準を見なければ確定しない。たとえば外国語表記、略語、造語、複合語まで一律に扱うのかは、今後の法令案と行政運用で詰められる部分である。

制度はどの段階か――法律改正後の下位法令整備が進行中

今回のニュースは「即日施行」ではない。制度の流れを整理すると、まず2025年末から2026年1月にかけて、保健福祉部は薬事法施行規則改正案を立法予告し、薬局の名称・表示・広告の制限範囲拡大を盛り込んでいた。その後、2026年8月26日に国会本会議で薬事法改正案が可決され、薬局開設者が医薬品の過大消費や乱用を招くおそれのある表示などを固有名称に用いることを禁じる法的根拠が法律レベルで明確になった。保健福祉部によれば、この改正法は国務会議を経て公布され、公布から3か月後に施行される予定だ。

10月6日の公表は、その法律を実際に運用するための施行規則改正を進めるという段階に当たる。したがって、現時点で言えるのは「禁止へ向けた具体化が進んでいる」ということまでであり、すべての薬局がすでに改名済みだとか、ただちに一律取り締まりが始まったと断定する段階ではない。また保健福祉部は、既に禁止対象の表現を使っている薬局について、法律施行日から6か月の猶予期間を設ける考えも8月時点で示している。既存店への適用は直ちにではなく、経過措置を伴う形になる見通しだ。

消費者にとっての意味――価格情報の遮断ではなく、判断基準の是正

この制度を、単純に「安売りを禁止する政策」と理解すると焦点を外しやすい。韓国政府が前面に出しているのは、価格の高低ではなく、医薬品購入の判断が過度に商業的な演出に左右されることへの警戒である。薬局は、処方箋調剤を含む医療提供体制の一部であり、一般小売業と同じ言葉づかいで競争が進むと、消費者は薬剤師による説明や適正使用の重要性より、値引きや大量陳列の印象を優先しやすくなる。

とくに一般用医薬品は、消費者が自ら選んで購入できる一方で、複数成分の重複、症状に合わない選択、長期連用などのリスクもある。政府が名称や広告表現を問題にするのは、販売現場での情報環境そのものが需要を刺激しうるからだ。薬局名に「特価」「最大」などが入れば、薬の選択が本来の必要性よりも販促メッセージに影響される余地が大きくなる。名称規制は、消費者の選択肢を減らすというより、医薬品を買う場の情報の質を整える措置として読むべきだろう。

まだ確定していない点と、確認した公表資料

一方で、不確定な点も残る。第一に、最終条文にどの語句がどこまで書き込まれるかは未確定だ。第二に、違反時の具体的な処分の運用は、施行規則や行政処分基準との関係を含めて今後の確認が必要である。第三に、既存の店舗名変更がどの程度必要になるかは、個別名称が最終基準に照らしてどう判断されるかによる。現段階で、すべての既存店が必ず即時改名しなければならないといった断定はできない。

本稿は、韓国保健福祉部が2026年10月6日に公表した「薬局名に『倉庫』『マート』『工場』『最大』『特価』などを使えないようにする施行規則改正推進」の内容を軸に、同部が2026年8月26日に公表した薬事法改正案の国会通過資料、韓国の国家法令情報センターに掲載された薬事法と薬事法施行規則の現行条文、さらに2025年11月28日から2026年1月7日にかけて実施された施行規則改正案の立法予告資料を基に整理した。現時点で読者が見るべきポイントは、韓国が薬局名の派手さを問題にしているのではなく、医薬品をどのような商品として社会に提示するのかという基準を、法律と省令の両面から組み替え始めていることにある。

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