AIデータセンター需要が追い風に キオクシア、「貼り合わせ」技術でNAND反攻へ

積層数だけに頼らない新構造で高速化と省電力を両立
サーバー向けSSD市場で存在感、サムスン追撃の足場固める

chatgpt image 2026년 6월 2일 오전 09 31 40
AIデータセンター需要の拡大を背景に、高性能NANDフラッシュメモリーと企業向けSSD市場で、キオクシアの「CBA」ウエハー貼り合わせ技術が注目されている。[c]j-policon.com

人工知能(AI)向けデータセンターの拡大が、半導体メモリー市場の勢力図に新たな変化をもたらしている。フラッシュメモリー大手のキオクシアホールディングスは、企業向けSSDの需要増を追い風に業績を大きく伸ばし、かつて先端開発競争で苦戦したとの見方を覆そうとしている。鍵を握るのは、メモリーセルと制御回路を別々に作り、後工程で高精度に接合する「CBA」と呼ばれる技術だ。

NAND型フラッシュメモリーの競争は長く、どれだけ多くの層を積み上げられるかが焦点だった。サムスン電子やSKハイニックス、マイクロン・テクノロジーが高積層化を進めるなか、キオクシアは一時、先端品の投入で後れを取ったとの評価も受けた。しかし同社は、単純な積層数競争とは異なる方向から性能向上を狙っている。

キオクシアが第8世代BiCS FLASHで採用したCBAは、「CMOS directly Bonded to Array」の略称である。データを記憶するセルアレイと、データの読み書きを制御するCMOS回路をそれぞれ別のウエハー上に形成し、最後に貼り合わせる。従来のように同じウエハー上で積み重ねる構造に比べ、セルと回路を個別に最適化しやすく、速度や電力効率、面積効率の改善につながる。

この技術の特徴は、積層数だけでは測れない性能を引き出せる点にある。キオクシアの第8世代BiCS FLASHは218層品だが、同社はインターフェース速度を3.6Gbpsまで高めたとしている。サムスン電子が9世代V-NANDで公表している最大3.2Gbpsを上回る水準であり、少なくとも速度面の一部指標ではキオクシアが強い存在感を示した格好だ。

もっとも、NANDの競争力は単一の性能値だけで決まるものではない。量産歩留まり、コスト、供給能力、顧客認証、製品ラインアップの厚みが総合的に問われる。サムスンは世界最大級の投資力と顧客基盤を持ち、SKハイニックスやマイクロンもAI時代を見据えたストレージ製品を強化している。キオクシアにとって重要なのは、CBAによる技術的優位を安定した量産と収益拡大に結びつけられるかどうかだ。

足元では、その可能性が見え始めている。生成AIの普及により、データセンターではGPUやHBMだけでなく、大量の学習データや推論データ、ログ、ベクトルデータベースを高速に処理するストレージ需要が急増している。企業向けSSDには、大容量化に加え、低遅延、高い読み書き性能、電力効率が求められる。キオクシアのCBA技術は、こうした市場ニーズと相性がいい。

同社が展開する企業向けNVMe SSD「CM9」シリーズは、第8世代BiCS FLASHを採用し、データセンターやエンタープライズ用途を意識した製品だ。前世代品と比べて読み書き性能や電力当たり性能を高めたとされ、AIサーバーのストレージ基盤を狙う。メモリー市況の回復だけでなく、こうした高付加価値製品の拡大が業績改善の背景にある。

キオクシアの反攻は、日本の半導体産業にとっても象徴的な意味を持つ。日本はかつてメモリー半導体で世界をリードしたが、その後は韓国や米国勢に主導権を奪われた。現在、日本政府や産業界は先端ロジック半導体の国産化に注目しているが、メモリー分野でも技術差別化による巻き返しの芽が出てきた。

AI時代のストレージ競争は、単なる容量競争では終わらない。より速く、より少ない電力で、より多くのデータを扱える構造を誰が実用化できるかが問われる。キオクシアのウエハー貼り合わせ技術は、その競争軸を「高く積む」ことから「賢くつなぐ」ことへ広げる試みだ。サムスンをはじめとする強力な競合を前に、同社が再び世界のNAND市場で存在感を高められるか。次の焦点は、技術発表ではなく、顧客獲得と量産実績に移る。

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